「オルカン」の破綻シナリオは、資本が自由に移動できなくなること
「オルカン」とは、世界中の株式に分散投資できるインデックスファンド『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』のこと。このファンドは『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス』に連動すること目指しており、アメリカ、日本、中国、新興国を含む、「全世界」の数千社に投資できるのが特徴だ。この特徴から、このファンドに投資をする人は「世界経済は成長するから、オルカンを持っていれば大丈夫」と信じている。(少なくとも筆者は。。
だが、この「オルカン」には前提がある。それは、「資本が自由に国境を越えられること」と「投資した国の経済成長の利益が自国の投資家にも返ってくること」だ。しかし、近年その前提が崩れ始めている。
たとえばアメリカは、2025年からのトランプ政権以降、中国との対立を深め、関税をかけるなどの経済的な壁を築いている。一方で中国もそれに対して報復関税をかけて対抗したり、アメリカに寄らない貿易相手国を探している。さらに、アメリカは中国以外の国々にも広く関税をかけているし、このアメリカの強権的な振る舞いは、世界の国々にも「アメリカって信用できなくね?」という不信感を抱かせる。このことから世界が「自由な市場」から「ブロック経済」に移行しつつあると言える。
事実、「オルカン」から中国企業やロシア企業が除外されるている。すでに2022年のロシアのウクライナ侵攻以降、多くのロシア株はインデックスから消えているし、2019年から中国本土の企業もその割合を減らしている(約5%=>2.8%)。今後、関税を端とした政治的な理由で指数から除外される国が増えれば、「オルカン」とは言えなくなるかもしれない。
さらに怖いのは、資産凍結のリスクだ。ウクライナ戦争を機にロシア人の資産が世界中で凍結されているし、中国人が持つアメリカ国内の資産が凍結されようとしているように、もし日本とある国が敵対することになれば、「オルカン」経由で保有していた企業の株式が無価値になる可能性もある。
つまり、「世界に分散投資すれば安心」という考えは、あくまで平和と自由貿易が成り立っているときだけの話で、国際情勢が変われば、「オルカン」は「全世界分散投資」ではなくなる。そうなったときは我々「オルカンホルダー」は、「オルカンだから思考停止で積み立てておけば大丈夫」なんて言ってられないのである。
…とはいえ、ここまで「オルカン」の国際分散性を疑ってみたものの、実際の「オルカン」って、そもそもそんなに国際分散されてない。。アメリカと日本で全体の約7割、カナダやヨーロッパを足せば約8割。。「今のところ」は、意外と地政学的に「安全側」に寄ってるとも言えるのかもしれない。