『ダンシング・ヒーロー』とは
『ダンシング・ヒーロー』(原題:Strictly Ballroom)は、1992年に公開されたバズ・ラーマン監督の長編映画デビュー作で、監督自身が手がけた舞台劇を基にした青春ダンスドラマ。
ちなみに、2025年5月12日時点では各種配信サイトでは見られないので、DVD等のみでしか見られない。
あらすじ
主人公のスコット・ヘイスティングス(ポール・マーキュリオ)は、社交ダンス界で将来を嘱望される若手ダンサー。しかし、彼は伝統的な社交ダンスに疑問を抱き、自分のスタイルで踊ることを望んだ。しかし、パートナーや周囲から反発を受け、孤立してしまう。そんな中、初心者クラスの地味な女性フラン(タラ・モーリス)がスコットに新たなパートナーとして名乗りを上げる。最初は戸惑い、反発したスコットだが、フランの情熱と独自の感性に触れ、次第に心を開く。二人は、伝統に縛られない自由なダンスを追求し、社交ダンス界の頂点を目指すことになる。
原題について
『Strictly Ballroom(ストリクトリー・ボールルーム)』の、「Strictly」は「厳格に」、「Ballroom」は「社交ダンス(ボールルームダンス)」の意味で、つまり「厳格なルールに従った社交ダンス」というニュアンスのタイトル。
このタイトルが示す通り、物語は「型通り」のダンスしか認めない保守的な社交ダンス界に対して、主人公たちが「自分たちの踊り」で挑むという構造になっている。邦題の『ダンシング・ヒーロー』は明るくポップな印象だが、原題はむしろ作品の本質である「伝統 vs 革新」や「形式 vs 自由」を的確に表していると思う。
『恐れを抱いて人生を生きる者は、人生を半分しか楽しめない』
『スコット』と『フラン』がそれぞれの「勇気」を振り絞るとき、『ダグ』が「勇気」が出せず精一杯生きなかった後悔を叫ぶとき、作中で何度も繰り返されるこの言葉にグッとくる。
この『恐れを抱いて人生を生きる者は、人生を半分しか楽しめない』という言葉は、「後先考えないでやりたいことをやれ」ということじゃない。「楽しみ」ってもんは、恐れを超えた先にあるもので、恐れを乗り越えることにビビって「楽しみ」を諦めるようなヤツは、人生を半分しか楽しめない、ってことだと思う。そして、まったくその通りだと思う。
筆者が「楽しみ」たいのは「生きている間の1分1秒も余すことなく満足できる人生」であり、それを脅かすのは4大リソース(お金、時間、健康、人間関係)の欠如だと考え、これを解決させるためにそれぞれの「恐れ」に向き合っている。自分で定義したゴールに向かって、自分で考えた方法で進んでいくこの様は、他人の評価軸ではなく、自分の信じたリズムとステップで踊る行為であり、『スコット』と『フラン』が映画のラストで踊ったダンスそのものなんじゃないかと思い、さらにグッときた。そして「これでいいんだ」と勇気をもらった。