『蟻の穴から堤も崩れる』~崩壊は些細な違和感から始まる~

「アリの一穴、岩をも砕く」

 新卒で勤めた会社で配属された営業部の部長の口癖は「アリの一穴、岩をも砕く」だった。本人は「小さい努力が大きい成果につながる」みたいな意味で言っており、それで営業部隊を鼓舞していた。筆者はダウナー系の性格なので、営業部長のことは好きではなかったが、その「ことわざ」は気に入っていた。なので、より深く意味を知りたいと思い、調べてみた。そしたらそんな「ことわざ」はなくてびっくりしたが、同じような意味で『蟻の穴から堤も崩れる』というのがあった。

 

 筆者は、「前提の間違っている努力は、成果につながらない」と考えているので、根性論としてこの言葉をとらえていない。むしろこの言葉を「小さいことに油断してると死んじゃうよ?」という警句としてとらえている。

『蟻の穴から堤も崩れる』~崩壊は些細な違和感から始まる~

 「疲れてる」、「イライラする」、「不安がある」、「さみしい」、「身体が痛い」など、こうした日常的な不調は、多くの場合「我慢できるから」と見過ごされる。しかし、実際にはこうした些細な「穴」こそが、後々になって堤を決壊させる原因となる。

 

 『我慢は続かない。心はゴムボールのように反発する』。『カイジ』の大槻班長の言葉が象徴するように、無視された小さな不快感は、じわじわと内側を侵し、ある日限界に達して爆発する。たとえば、イライラの放置は酒やギャンブル、暴飲暴食へ。さみしさはホスト通いやオタ活の浪費へ。不安は薬物依存や詐欺被害へとつながる。これらはぜんぜん珍しい話じゃない。小さな問題が大きな悲劇に変わるのは、むしろ「よくあること」なのだ。

 

 だから筆者は、4大リソース(お金・時間・健康・人間関係)を守ることを最優先にしている。これらが少しでも削られたと感じたら、すぐに原因を洗い出し、対処する。


 たとえば、

  • 疲れすぎる仕事は即やめる準備をしておく。そのために普段から固定費を上げず、「贅沢」を避けて身軽に暮らす。
  • 孤独が生活の中心に入り込まないよう、仕事や地元以外でも人と関われるように、格闘技とギターとゲームで、関係性のルートをいくつも確保する。
  • 身体に違和感があればすぐ病院へ行き、医師の助言のもとで生活を組み直す。

 

 4大リソースが壊れれば、生活そのものが崩れるのは自明である。だから、筆者はそれを守らない生活を選ぶ人間に対して、正直あまり同情する気になれない。もちろん「警告」はするが、『唯ただ善人のみ能よく尽言(じんげん)を受く』の通り、それが響いたためしはまずないし、わざわざ「対話」というコストを払うほど暇でもない。せいぜい、自戒も込めてこうしてブログに書き残すだけである。

spreadthec0ntents.com

 『蟻の穴から堤も崩れる』。この言葉は、リソースを守って生きる人間にとって、実に的確な警句であると思う。

参考

kotobank.jp