「何かをすること」は同時に「他の何かをしないと決めること」でもある。たとえば「今日は友達と飲みに行こう」と決めれば、「ジムに行かない」「勉強しない」と決めたのと同じだ。同時にはできないから。
だが多くの人は、この「裏側の選択」を意識していない。
もちろん、楽しさを優先することが悪いわけではない。問題は、「なぜその選択をするのか」という根拠がなく、ただその瞬間の気分だけで決めてしまうことにある。
後悔の正体とは、「意思決定の文脈がなかったこと」だと思う。
「もっと身体を鍛えておけば」、「お金を貯めておけば」、「あのとき勉強していれば」、「チャレンジしておけば」。
こうした後悔の多くは、当時の自分が「なんとなく」で決めた結果にほかならない。逆に言えば、「あのときの自分なりに筋の通った判断だった」と思えるなら、人はあまり後悔しない。
自分の人生において無駄な選択肢を選ばないムーヴを「コスパ重視」(安っぽい言葉ではあるが)と考えるなら、そのために必要なのは「設計図」を持つことだと思う。自分がどうありたいか、どんな未来を目指すのかを明確にしておく。そうすれば、日々の選択をその設計図という「文脈」に照らして判断できる。設計に沿う行動はプラスで、外れる行動はマイナス。これが見えるようになれば、意思決定の質は一気に上がる。
「自分は長期的にどうなりたいのか、そのために今どう動くべきか」。この二つを常にセットで考える習慣があれば、迷うことも、後悔することも減っていく。
つまり、後悔の本質は、「過去の単品の失敗」ではなく、「そのときの意思決定に文脈がなかったこと」なのである。