賃貸物件を借りる際の価格交渉の考え方

自分にある選択肢を確認する

 物件を交渉する際には、現在自分にある選択肢を確認することが必要だと思う。

 仲介会社の初期費用には罠がたくさんあることは各所で言われていることだが、自分の選択肢によってはそれでも手に入れなければならないこともある。

 例えば、「必ず月末までに入居する必要がある」などの事情がある場合は、「その物件がダメなら他を当たる」ということができなくなる。

 また、1〜2月の賃貸物件繁忙期には、需要過多で「他の物件」がそもそも見つからない可能性もある。

 なので、該当の物件の初期費用を交渉する際には、その交渉がダメだった時に自分は他の選択肢をとりうるのか、ということを考えて望まないと不幸になってしまう。

交渉のゴールを明確にする

 自分の選択肢を把握したら、次は交渉のゴールを明確にする。

 自分に選択肢がたくさんあるのなら、「全てのぼったくり」を指摘して理想の価格で契約することができるだろう。

 自分に選択肢が多くないのならば、まず初期費用の項目を以下のように分類してみて、交渉することで誰の利益を削ることになるのかを把握する。

・物件オーナーの利益:礼金・敷金

・仲介会社の利益:仲介手数料・保証会社保証料・火災保険・消毒代

 交渉は基本的に仲介会社と行うので、仲介会社の選択肢が多く、かつ、交渉内容が大幅に仲介会社の利益を損なうものであれば、交渉のテーブルはひっくり返されてしまう。

 自分の選択肢と相談で、どの項目をどうやって削るかを考えて、交渉のゴールを設定する。

交渉は当日にする

 交渉は当日に行うのが良いと考える。

 「契約はサインすれば成立する」という状況は仲介会社にとっては嬉しいことだと思う。契約するには物理的にサインをする必要があるので、メールでの交渉よりは利益をイメージしてもらいやすいだろう。

 「今すぐにサインする」ということは、買う側にとっては強いカードであることは意識しておきたい。

交渉材料は持参する

 例えば、「火災保険は指定の業者でなく、こちらで任意に選びたい」と持ちかけた場合に、こちらが任意で選ぼうとしている業者のパンフレットと記入済みの契約書を持参していた場合は、仲介会社としては、「とりあえず火災保険にはすぐに入ってくれそう」と安心感を与えることができる。

 また、他業者のパンフレットがあれば、仲介会社が提示したサービスの代わりに使う業者の価格やサービス内容が分かるので、仲介会社の指定業者を利用することが妥当なのかということを客観的に判断することができる。

 相手が判断できる、安心できる材料を持ち込めば話が進みやすいと考えている。

正論ではなく自分の選択肢が多い状態を作って交渉すること

 これが大事なのである。

 オーナーや仲介業者や「それがぼったくりであること」を分かった上で、こちらに価格を提示しているのである。

 それを分かりきった正論で「〜という理由でぼったくりですね」などと迫っても、「チッ、めんどくせーやつだ。今この物件は他にも借り手が探せそうだから、他のやつにぼったくり値段で貸せるかチャレンジしようかな。」と思われてしまう。

 もし、借りる側に十分な時間の余裕、豊富な交渉材料があり、貸す側に客付を急がなければならない理由がある場合は、借りる側がだいぶ有利に価格の交渉ができるだろう。

 その時は正論でグイグイ押してやればいい。もしかしたら、思いもよらない割引までついてくるかもしれない。

 価格交渉の成否は「お膳立て」にかかっているのである。